かたち
こどものころに作った人形(という言い方を自分ではしないけれど)がある。そのころ読んでいた漫画に出てくるロボットを真似して自分なりに作った。いまでは手のひらにすっかりおさまる大きさだが、あのころはもう少し大きかっただろう。
その人形が7月30日が誕生日。いまもおおむね毎年思い出している。いま、机の上でおだやかにしている。
こどものころには、いつかこの人形と別れるとき、手放すときがくるのだろうかと、不安に思うときがあったのを覚えている。あのころはいろいろなぬいぐるみやおもちゃに囲まれていた。あるときに親から、そろそろ片付けていいかと言われて、ぬいぐるみたちやおもちゃたちを引き渡した。そのときに、この人形は手元に残したのだった。
手放したものは戻ってこない。いまも思い出す。
いまもこうして、かたちとして残っているこの人形。
かたちであるということ、かたちがここにあるということ。としつきをこえて。自分も同じだけ過ごしてきた、としつきをこえて。
いまおだやかに、ここにいる。いてくれている。